紙をめぐる話|コレクション No.03

大切に読んでほしい
本のかたち
『グラフィックデザイナー
の肖像』

2004年から2006年まで、見本帖本店で行われた
公開インタビューを採録した本書は、
本来の書籍のあり方を思い出させる、
函入りの書籍となりました。
グラフィックデザイナーの先輩から後輩が
引き出してくださった楽しくて深いお話ばかりです。

初出:PAPER'S No.34 2010 冬号
※内容は初出時のまま掲載しています

デザイナーの話 
平野敬子さん(デザイナー)

公開インタビューを企画したという経緯から、最終的な書籍の構成までを手がけることとなりました。ライブで生き生きと展開された諸先輩方の言葉の奥深さ、日本語の奥行きは、話してくださった方々の哲学や思想が純粋に現れていました。それらを書籍でも臨場感をもって体験していただきたいという考えから、インタビューの写真、文章、作品画像という3つのエレメントが常にシンクロするような立体的な構成を組み立て、映像的な表現処理を施しました。本文用紙は束が厚いので目に負担の少ない黄味のある白い紙を選びました。当初から上製本、化粧函でという気持ちは変わらなかったのですが、ずっと読んでいただきたい内容だからこそ、必然的にこのかたちになったように思います。ストライプは時間の連続性の象徴であり、函とカバーでタテヨコのストライプが交錯するのは、18名の方々の考え方が織物のようにつむがれて1冊の本になるということの象徴です。銀と金属の物質感、マットとグロス、銀とグレーの質感の変化もそうです。900点を超える画像を本文の中に美しく再現してくださった技術。気持ちの良い函づくりの職人芸。校閲も含めて新潮社がもっている本づくりの経験、印刷や製本の技術者の方々の専門性に支えられてできた書籍です。

 

出版社の話 
金川 功さん(株式会社新潮社出版部《とんぼの本》編集室 室長)
大森賀津也さん(株式会社新潮社装幀部 部長)

20~30年前頃まで、新潮社では、小説などは布貼表紙、函入りというのがスタンダードで、装丁の仕事は、布を選び、色を決めて染めるところから始まったものでした。しかし、近年では造本は簡易になって、今回のような函入りの本をつくる機会は少なくなっています。新潮社にお話が来たときには、平野さんの頭の中にはすでに紙や最終形がかなりの精度でできあがっていたように思います。私たちはその実現をお手伝いしただけですが、今回は、久しぶりに本らしい本をつくることができたとても良い機会でもありました。例えば函から書籍がすーっとゆっくり降りてくるクオリティ。函がちょっと緩いかなと思ったとき「気持ち締めてください」という言い方で製本屋さんに伝わる。これは長年のつきあいの中で培われた呼吸なんですね。新潮社の組版ルールは現在アドビでオープンリソースとして公開していますが、長い年月の中で新潮社と製本・印刷会社との間で醸成された読みやすさのリソースが現場の中にストックされています。そうした技術や職人の心意気が、今回の書籍には随所に現れています。それもこれも平野さんの熱が現場に伝わったからではないでしょうか。