紙をめぐる話|コレクション No.09

粒子の透明感
─代官山 蔦屋書店の
グラフィック

店内に配された半透明のサインや、
特徴的な建築の外観から発想された、
さまざまなグラフィックツール。
白を基調とした、落ち着きのある上品なトーンには、
大人たちに向けられた書店というコンセプトが
息づいています。

初出:PAPER'S No.40 2012 春号
※内容は初出時のまま掲載しています

デザイナーの話
原 研哉さん(グラフィックデザイナー)

代官山 蔦屋書店に行ったらまず店内のサインを見てください。1mmの薄さのパンチングメタルの透過性が、店内の導線をつくっています。パンチング素材のドッツパターンを新規会員カードからショッパーなど、各種グラフィックツールに展開しました。主に使用しているのはアラベールの新色、ウルトラホワイト。このマットな白さが、ドットの配列をより効果的に浮き立たせています。一方、クライン・ダイサム・アーキテクツによる建築の外観は、表面に丸みをもった「T」のブロックで覆われています。オープンを記念してつくったプロダクツには、外壁の複雑な「T」のパターンをエンボスで再現したタトウをつくったり、メモブロックの表面に「T」の凹みを彫り込んだり、不織布にモールド加工を施したパッケージをつくったり…と、短期間ながら技術的な試みも随分とたくさん行いました。紙を含む素材を選び抜いたプロジェクトだったと思います。

 

コーディネーターの話
青柳晃一(株式会社竹尾 コーポレート営業部 マネージャー)

タトウの話を頂いた時、代官山の「T」ブロックの外観の写真を拝見しました。「T」のシルエットをはっきり出しながら、上部に丸みを持たせたいとの要望に、イメージは共有できましたが、実際の制作は思ったより困難でした。丸みのあるエンボスを作るには彫刻版を使いますが、納期と予算の関係で、腐食版を使うことになりました。幾つかの方法を試みて、希望のエンボスは実現しましたが、何しろA3サイズ全面への加工です。波打ちの心配もありますし、真ん中と端のエンボスも均一になるような調整も必要です。紙の適性も考慮し、ツールに使用したアラベールと、コットン配合で柔らかいNTラシャでそれぞれ3種類の試作を作り、NTラシャに最も強くエンボスしたものが採用になりました。普段は印刷適性や風合いなどが重視される紙ですが、今回は立体的な視点からのアプローチで未知数の部分が多々ありました。無事に納品できたのは、デザイナーと加工現場のものづくりに対する情熱によるところが大きいと思います。また、私自身も原料を含めた紙の物質性の違いを経験することができました。今後も、紙という素材にこだわり、新たなご提案をしていけたらと思っています。