紙をめぐる話|コレクション No.10

詩のあたらしい届け方
『ポエメール』

差出人の名は、「谷川俊太郎」。
三篇の詩と、趣向が凝らされた様々なおまけが、
ひと月に一度おくられてくる郵便物です。
詩集でもなく、電子書籍で読むものでもない。
思わぬ人から直筆の手紙が届いたときの
あのワクワク感もいっしょに味わえる詩。
ポストを開けるのが一層楽しくなりそうです。

初出:PAPER'S No.41 2012 夏号
※内容は初出時のまま掲載しています

デザイナーの話
寄藤文平さん(アートディレクター)

デザインの中核は、プレゼントできるプレゼントです。コースターやポストカードのような紙のアイテムに谷川さんの詩が刷られたものであれば、ちょっとした贈り物にもなりますよね。そうした機能性のある郵便物にしたかったんです。ただ送られてきたハガキに詩が刷られているだけでは難しいと感じたので。それと封入されている制作物はそれぞれ使っている紙が違います。「あ、いろいろ届いてる」って思ってもらいたくて。学研のふろくのように、いろんな紙のおまけがドサッと届くあの感じ、当時はわくわくしましたよね。特に第一弾は入れ子状の封筒という紙の使い方をしているので、その感覚がより味わえるんじゃないでしょうか。紙の質感に関しては、スーパーのチラシみたいな、谷川さんの生活の中から出てきたようなものを選んでいます。ポエメールは詩集ではなく、楽しみながら受け取るもの。そうしたものには、ある種の雑味があってほしいと思ったからです。紙の質感と詩の相性を確かめるため、竹尾の紙に片っ端から詩を刷って検証しましたね。一番外側の封筒はルミネッセンスです。同封されているものがぬくもりのある雰囲気なので外側は上品な質感でもいいかなと。宛名ラベルに関しても、ルミネッセンスを使っています。宛名ラベルって肝だと思いますから。今みんな、郵便物に幻滅することが多い気がします。郵便箱を開ける時って、子どもの頃は楽しかったと思うんですよね。ポエメールは、こうした現代に一石を投じられるんじゃないでしょうか。

 

編集者の話
ナナロク社(村井光男さん、川口恵子さん)

月に一度、半年間で計6通、谷川さんの詩が自分宛に届く。それがポエメールの仕組みです。きっかけは谷川さんから詩をバラ売りしてみたいと相談されたことでした。初めは電子書籍も検討したのですが、もっと面白い方法があるんじゃないかなと話し合い、その中で「手紙」というアイデアが出てきました。Twitterのように、言葉が大量に拡散され、バーチャルな繋がりを簡単に構築できてしまう時代。その今だからこそ、郵便という、じかに手で触れられる「紙」に言葉を載せて届けることに意味があるのではないかと。ポエメールでは、自分の名前がきちんと紙のラベルにレイアウトされたお便りが届くことによって、半年間、本を買うのとはまた違った手段で、谷川さんとの一対一の関係が築かれますよね。それを楽しんでもらいたいと思ったんです。詩をどう伝えていくかに関しては、谷川さんも昔から興味がおありだったようです。私たちも、詩やポエジーを、書籍だけではなく、もっと多様なかたちで届けられないだろうかとずっと考えていたんです。出来上がったポエメールを見て、谷川さんも「アートじゃなくて、クラフトっぽくて良いね」とおっしゃいました。そういった手づくり感も含めて、これが届くことを楽しんでもらいたいです。6通の郵便を通して、どんな反応や広がりが生まれるのか、私たち自身、とても興味があります。この半年間が楽しみです。