紙をめぐる話|コレクション No.16

はかなく透き通る飾り
─仙台七夕まつり
鐘崎の七夕飾り

伊達政宗の時代から続くと言われる「仙台七夕まつり」。
そこで伝統的に飾られているのが「七夕飾り」です。
1,500にも上る作品が一斉に商店街に
並ぶ様子はまさに壮観。
大胆に色を配した豪華絢爛な装いのものが多いなか、
透けるように白く、たおやかに佇む
仙台笹かまぼこの老舗「鐘崎」の七夕飾りは、
まったく異色の存在感を放っていました。

初出:PAPER'S No.47 2014 秋号
※内容は初出時のまま掲載しています

デザイナーの話
髙谷 廉さん(AD&D)

いただいた依頼は「従来にない七夕飾りを」というものでした。でも地元の立場から考えると、ただ斬新なだけでは人々から共感されないだろうと思ったんです。そこで伝統のかたちに添いながらも新しく見えるデザインを探りました。フォルムのモチーフは「鐘」。平和の象徴である鐘と「鐘崎」の鐘に、鎮魂や復興の想いを込めました。風が吹くたびに風船に忍ばせた鈴が揺れ、微かな音が周囲に鳴り響きます。色はかまぼこの「白」。目の覚めるような白ではなく、はかなく透ける白です。使った紙は今回のために竹尾さんに特注した透ける和紙。光の加減によって透明度が変わるので、朝は白く、昼は半透明になって七色の鈴が浮びあがります。鶴の紙はオフメタルの金。華美ではなく、品良くするために青系の金を選びました。普段の仕事では平面を扱うことが多いので立体にする際は苦労もしましたが、東北博報堂さん、ジャパンデザイン工芸社さんと共に改良を重ねることで、イメージ通りの仕上がりになりました。この作品をきっかけに伝統に新しい風が吹き始めれば嬉しく思います。

 

クリエイティブディレクターの話
岡本有弘さん(株式会社東北博報堂)

「仙台七夕まつりは日本最大の紙の祭典。紙に精通する人に制作を頼みたい」。鐘崎の吉田社長のこの言葉から、竹尾さんと髙谷さんにお願いすることになりました。最初にデザイン案を見た時、すぐに「これだ」と感じましたね。七夕飾りは伝統として和紙、鶴、七色など、使わなければいけないパーツが決められています。それをきちんと守っていながら、紙の特徴を最大限に引き出すことで新しい形を表現できている所が素晴らしい。そのために何度も模型を作って試行錯誤を重ねました。長年この祭りを見ていますが、ここまで想いの込もった作品は異色です。このような新しいチャレンジが金賞受賞という形で受け入れられたのだと思います。