紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.19

コルデノンス
選別室

その空間は、ほとんど無音だった。
微かに聞こえるのは遠くの機械音と、紙をめくる音。
柔らかな自然光の注ぐ窓辺で
制服に身を包んだ数人の女性が
黙々と作業する光景には、
修道院にも似た神聖さがあった。
彼女たちの仕事は紙の検品。 仕上がってきた紙に
傷や折れなどがないか、手作業で丹念に確認していく。
最も驚いたのは、その精査基準の厳しさである。
近くで目を凝らしてみても、どこに瑕疵があるのか
判別の付かない紙が不良品として選り分けられていく。
見えないほどの不備も見逃さず、
わずかな譲歩も許さない。
そんな紙に向ける厳格すぎるほどの視線の先には、
つねにクライアントやユーザーたちの姿がある。
彼らとの関係を「友情」と呼ぶコルデノンス社。
その深い信頼はここで一枚一枚、 積み重ねられている。

初出:PAPER'S No.54 2017 春号