紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.20

コルデノンス
用水路

青く澄みきった川が、穏やかにせせらいでいた。
ほんの直前まで工場で使われていたとは思えないほど
透明度の高い水だった。コルデノンス社では、
紙づくりに必要な水を地下200mから汲み上げている。
土地の貴重な水源から借り受けたその清廉な水は、
近年、膨大な投資を行って独自に開発したという
二重の浄化施設を経て工場脇の小川へ戻されていく。
「私たちは水に生かされているんです」。
だから使った水はきちんと元の姿にして返すのだと、
5代目オーナーのジルベルティさんは慎ましやかに語る。
ヴェネツィア近郊の街として水路とともに発展してきた
この地域の人々にとって、
水を守ることは根源的な精神だ。
どれだけ時代が変わろうとも、世代交代が進もうとも、
決して変わることのない信条が、
そこには脈々と流れていた。
 
初出:PAPER'S No.55 2017 夏号