紙をめぐる話|コレクション No.30

竹尾ペーパーショウから
生まれた stacking paper lid

2006年の竹尾ペーパーショウで、
プロダクトデザイナーの柴田文江さんがデザインした
紙カップの紙の蓋「stacking paper lid」。
14年の歳月を経て、現代のライフスタイルが
エコロジカルなデザインに追いついてきました。

初出:PAPER'S No.61 2020 夏号

デザイナーの話
柴田文江さん(プロダクトデザイナー)

2006年の竹尾ペーパーショウで発表した頃は、まだプラスチックは現在ほど悪者ではありませんでした。むしろ、紙カップにプラスチックの蓋がついただけで値段が高く設定されていた時代です。当時、紙でプロダクトをつくりたいと考えていたので、紙以外でつくられているものを紙にしたらどうかと考える中で、紙カップの蓋を紙にしたらどうだろう、というアイデアが浮かびました。
実際にやってみると、まず成形が難しい。パルプモールドなら可能でもコスト面で現実的ではない……試行錯誤の結果、担当スタッフが紙カップを重ねると抜けなくなることを発見し、“重ねる方式”のデザインにすぐまとまりました。展覧会の後、実店舗で使ってもらいたいと思ったものの、意外に受け入れられなかったので、そのまま放っておいていました。
それが2019年になって、私がデザインしたカプセルホテル「ナインアワーズ」で水を提供するために蓋付きの紙コップにしようということになり、「そういえば…」と盛り上がりました。そして、竹尾に相談して日本デキシーを紹介していただきました。
展示品ではなく、実際に大勢が使うものになると、機械的につくれる寸法にデザインを翻訳しなければならない。メッセージを伝えるために蓋の部分だけ象徴的に色紙を使いたかったのですが、染料が出てしまうので食品衛生上よろしくない。厚みや匂いの少ない紙なども検討しました。紙はもともとの成り立ちが有機的なので、それを工業的なものに落とすのは難しいのだなと改めて思います。
現代は、無駄のないもの、過剰ではないものをみんなで使いこなす時代です。これまでにないものをデザインすることはなかなか難しいことですが、もともとあるものの使い方を変えるだけでもエコになります。これが一つのきっかけになってくれればと思っています。

 

製造担当者の話
及川 淳さん(株式会社日本デキシー 営業本部 営業企画部 営業企画課 課長)

竹尾さんからお話をもらった時、紙カップの高さが低いモノをつくればよさそうだけれど、当社の既存設備では規格外のサイズなので、「つくってくれと言われたら、どうしようかな……」と、正直思いました。ただ、紙製リッドなら分別しないで廃棄できるのがとてもいい。紙カップをつくる技術を応用して実際につくってみたところ、リッドには通常の紙カップにはある飲み口の巻き部分がないので、胴部の貼り合わせのズレが目立ってしまい、見栄えが良くないなどの課題が見えてきました。いま新規設備の検討を進めていて、量産するにはいくつもの課題があるのですが、一つ一つ潰していこうと思っています。紙カップは、防水のためにポリエチレンを使った「カップ用原紙」を使っています。私たちとしても、このプラスチック材を無くしたいと思い、単一素材としてリサイクルできる紙カップの開発を進めています。それにしても、これまで外嵌合*ばかり考えていたんですが、stacking paper lidの内嵌合はスタイリッシュですね。

嵌合*:かんごう。本体とふたのはめ合いのこと。
stacking paper lidの詳細はstackingpaperlid.com

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