紙をめぐる話|コレクション No.34

芸術として刷られたマンガ
──SHUEISHA
MANGA-ART HERITAGE

マンガの一コマを、こんなに長く
見つめたことがあったでしょうか。
これは、マンガを消費財ではなく、
後世に受け継がれるアートにする試み。
体温や肉声まで感じられるような濃密な空気感、
気づかなかった細部の発見等々、
雑誌やコミックスとはまったく違う、
異次元の体験がもたらされるこの作品は、
ドイツ・グムンド社が主催する
2021年のグムンドアワードを受賞しています。

初出:PAPER'S No.65 2022 夏号
※内容は初出時のまま掲載しています

企画者の話
岡本正史さん(株式会社集英社 デジタル事業部)

マンガは何よりもエンターテインメントです。一人でも多くの読者へ、いかに面白く、いかに安価で届けるかに情熱を注いできました。一方で、再生紙に活版輪転機で印刷されたマンガ誌や、マンガ原稿執筆に用いられる画材は経年変化に弱いものも多く、次第に劣化していきます。その問題を解決するため、集英社では2008年よりカラー原画を高精細でスキャンし、デジタル上にアーカイブしてきました。それらの資産を新たな価値に変え、世界に向けて送り出すのがこのプロジェクトです。その中で、マンガ表現の歴史に欠かせない活版印刷に敬意を払い、その技術とともに後世に残していくために取り込んだのが「The Press」シリーズ。現在では希少な1960年代製のハイデルベルグ活版平台印刷機を使い、数多くの紙をテストした中から選んだコットン100%のグムンドコットン マックスホワイトに印刷しました。この紙の表面はスムーズかつ柔らかで、強い印圧でプレスされる活版平台印刷により、印刷面が沈む独特の表情が現れます。NFT販売証明書を紐づけるなど様々な試みをしており、「The Press」では、今後も新しい作家や作品を迎えて新作を発表していきます。

製紙会社の話
Herbert Eibachさん(グムンド社 マネージングディレクター)

グムンドアワードは、グムンドのファインペーパーを使ったプリント等を対象に、世界でもっとも優れたデザインやクリエイションを選ぶイベントです。紙やデザイン、印刷物に対する情熱やディテールを共有し、人と人を繋ぐことを目的に設立されました。年々、規模は拡大し、国際色も豊かになっています。集英社マンガアートヘリテージは、デザインと印刷の分野で長年の経験を持つ外部の専門家からなる審査員によって、2021年のアート部門の大賞に選ばれました。作品の全体的な印刷品質とプレゼンテーションに目を見張るものがあったことが理由です。グムンドコットンは、箔押しや、活版印刷に最適なソフトで崇高なコットンペーパーの実現を目指して開発されました。原料の選定から始まって一切の妥協なく、時間をかけて製造しています。その品質の高さから、アパレルの下げ札や、その他多くの高級印刷の用途や分野で非常に人気があります。そんなグムンドコットンの特性をよくご理解いただき、活版印刷と組み合わせることで生まれたマンガアートは、まさに大賞にふさわしいものだと考えています。

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