紙をめぐる話|コレクション No.32

竹尾ポスターコレクション
20世紀のポスター
[図像と文字の風景]
──ビジュアルコミュニケーションは可能か?

言語や文化、国籍を越えて、人と人はわかり合うことが
できるのか。そんな答えのない普遍的な問いに、
旺盛な創造力と実験的精神によって向き合い、
ビジュアルデザインの可能性を拡張してきた
構成的ポスターを辿る展覧会が開催されました。
会場に並べられた130点の問いが、デジタル全盛期とも
言える現代に、歴史とメディアを越えた
コミュニケーションの本質を投げかけます。

初出:PAPER’S No.63 春号

企画者の話
佐賀一郎さん(多摩美術大学 准教授)

ビジュアルデザインの目的は伝達=ビジュアルコミュニケーションにある──すでに社会通念化しているこの規定に異論をはさむ人は、それほどいないはずです。しかし、その長い歴史を通じて、ビジュアルコミュニケーションはどの程度に可能で、またどの程度に不可能だったのでしょうか。そのように考えるだけで話が大きく違ってきてしまうように感じられるのは、ある意味不思議なことです。おそらくその理由は、この問いが、ビジュアルデザインの範疇を越えて、「私たち人間は、お互いにどの程度分かりあえるのか」という、尽きることのない、普遍的な問いにつながっているからでしょう。本展が取り上げる構成的ポスターは、1920年代に登場した構成主義に端を発し、第二次世界大戦を経て、外観の上では幾何学的傾向を、内容の上では客観性と中立性に裏付けられた民主主義的傾向を深めました。70年代に入ると、社会の多様化に呼応して、制作者の個性をストレートに反映した多様な表現/解釈を許容するものへと変貌を遂げ、80年代以降はパーソナルコンピュータの登場もあいまって、ますますこの傾向を加速しました。この劇的な、短いながらも歴史ある構成的ポスターの変遷を今日振り返ると、常にそれが「コミュニケーションは可能か?」という問いのもとに進行してきたことに気づかされます。(下段へ続く)

展覧会図録『20世紀のポスター[図像と文字の風景]』
展覧会企画構成/カタログ編集:多摩美術大学、東京都庭園美術館、日本経済新聞社文化事業部|カタログ監修:佐賀一郎(多摩美術大学)|アートディレクション:澤田泰廣(多摩美術大学)|ブックデザイン:長澤昌彦|発行:日本経済新聞社

私たちは、ビジュアルコミュニケーションの力を暗黙のうちに信じて生きています。また、それを前提に社会が機能しているのも確かなことです。それでいて、それがどの程度確かなことなのか、芯の部分は誰にもはっきり分からない。実際、今日のグローバルなコミュニケーション環境は、私たちが行うコミュニケーションの不完全さを、ますます露わにしつつあるようです。私たちが依って立つところの「コミュニケーション」という概念は、存外に、薄氷の上にあるのではないでしょうか。ポスター制作者が一貫して向きあってきた「コミュニケーションは可能か?」という問い、構成的ポスターが一種の歴史絵巻として提示する問いが、今日、ますます大きなものとして目に映るようです。

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