紙をめぐる話|紙の研究室 No.05

贈り物における
包装紙の変遷

クリスマスやお歳暮——贈り物の多い季節がやってきます。その贈り物と切っても切り離せないのが包装紙。その歴史はどのように始まり、どのような発展を遂げてきたのでしょうか?百貨店のなかでも歴史の古い「三越」の資料担当を務める松澤恵さんにお話を伺いました。

初出:PAPER’S No.36 2010 秋号
※内容は初出時のまま掲載しています



包装紙はいつから使われ始めたの?
包装紙が使われるようになるまでは、屋号を染め抜いた風呂敷が主流でした。三越で一番はじめに使われた包装紙は、明治中期の1890年代に生まれたのではないかと考えています。西洋から製紙技術が輸入され、洋紙が普及してきたことと関わりがあるようです。

包装紙にはどのような紙を使っていたの?
一番はじめの包装紙は、茶紙と呼ばれる茶色いクラフト紙です。これに透かしで「三越」マークや「三本線」を入れたりしたものもあります。印刷包装紙を使うようになったのは明治44年頃。特抄きの、パラフィン紙のような紙に印刷をしていました。昔は包装紙の二次的な使用として、タンスの引き出しの底に敷いたり、お弁当を包んだりしましたよね。そのくらい、丈夫な紙だったのです。1950年代になると省資源化が叫ばれ始め、また紙質も向上したことから、今のような既成の晒クラフトに印刷をするようになりました。

包むときに心がけることは?
美しく包装するために、角をきっちりと出すことです。また折り方については、西洋の百貨店では「キャラメル包み」が主流ですが、日本の百貨店では正式な包装で礼をつくしたいという想いから「斜め包み」を採用しています。シールを最後に留める箇所にのみ使うので仕上がりもきれいです。ちなみに昔も今も、新入社員には包装紙の包み方の教育を徹底しています。

斜め包み|包装紙を斜めに置き、箱を回転させながら包んでいきます。包み終わりが一カ所にまとまります。

キャラメル包み|包装紙の辺と箱の辺が平行になるように置き、両側から合わせるように包み込みます。

折り方には決まりがあるの?
「斜め包み」は、祝儀と不祝儀で折り方が違います。祝儀は箱の「天」の位置に内側への折り目が重なります。そこには「幸せが上から入り、下から出ていかないように」という意味があるそうです。不祝儀は「地」の位置に内側への折り目が重なるようになっています。「不幸が下から落ちるように」との意味からだそうです。細やかな所まで気配りをする、日本人ならではの作法です。

包装紙のデザインはどう変わってきたの?

かつて包装紙は、コーポレートアイデンティティとしての役割のみならず、時には広告や情報媒体としての機能も果たしていました。館内案内図や東京近郊の路線図、度量衡法改正が施行された年はメートル尺貫法の早見表が印刷されたこともありました。ちなみに三越の現行の包装紙は、昭和25年のクリスマスの時に猪熊弦一郎画伯によってデザインされたものです。

三越の包装紙の変遷


新館落成記念
大正6-9年頃

店内案内図
大正10年頃

本店・分店紹介
大正13年頃

東京近郊の路線図
大正末期から昭和初期

 

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