紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.28

特種東海製紙 岐阜工場
長網抄紙機 タントN-52

目にすると脳裏に焼き付いて離れない、鮮烈な赤。
したたる艶が、熱い温度を伴って心の深くまで
染み込んでくる。ファインペーパーの故郷である
特種東海製紙岐阜工場は、無数の紙の彩りを
創造してきた色の工場でもある。
タントはその代表例。1970年頃から同社の
顧問を務めていたデザイナーの田中一光氏と、
ファインペーパーの開発者である杉本友太郎氏の
気の遠くなるような検証の果てに生み出された。
色の機微を知り尽くした田中氏の目指す水準は
途方もなく高く、発売当時のラインナップであった
100色が決まるまでに杉本氏が手抄きした
色見本の試作は、一万枚にも及んだという。
他に類を見ないほど豊富なタントの色数は、
まさに執念の集積。古来より日本では
赤は燃え立つものの象徴とされてきたが、
理想を実現するために惜しみなく注ぎ込まれた
二人の情熱は、人の心を高揚させる色となって、
今でもほとばしり続けていた。

初出:PAPER’S No.63 春号

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