紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.34

大子那須楮(だいごなすこうぞ)
寒風干し

楮づくりは手間と暇を惜しんではいけない。
丹念な作業に加えて、
じっくりと時間をかけることが大切になる。
黒皮と甘皮を小包丁で丁寧に取り除いたあと、
冬の大子町の乾いた寒風に二日ほど晒しながら干す。
すると、乾燥前は緑味を帯びていた楮が
みるみる白くなっていく。
まだ土の匂いをまとっていた植物に、
和紙の面影が現れてくる。
時間が経つほど繊維はやわらかくなっていくため、
和紙をやわらかくしたい場合、
室内で数年寝かせることもある。
時間をかけて干したあとには、さらに手間を重ねる。
表皮の裏側までつぶさに目を凝らして
小さなゴミや虫食い、腐ってしまった部分を
細やかに取り払ってから出荷する。
紙漉き職人が不純物を除去する
「ちり取り」の負担が減り、
より濁りのない澄みきった和紙に仕上がるからだ。
大子那須楮には、手間と暇、
そして手厚い心配りが宿っている。

初出:PAPER'S No.69 2025 冬号

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