紙をめぐる話|コレクション No.28

秘められた可能性を
組み立てる
THE GEOMETRIST

紙の多面体を作るDIYキット「ザ・ジオメトリスト」。
5つの正多面体を基本に
多様な構造体を生み出せるだけでなく、
工作を通してものごとの原理を発見する
感覚を育むことができるなど、
まさに多面的な可能性を秘めています。

初出:PAPER'S No.59 2019 夏号
※内容は初出時のまま掲載しています。

デザイナーの話
安積朋子さん(TNA Design Studio)

フラットなものを立体に立ち上げて「空間」を表現するオブジェを作ることに、以前から興味を持ち続けてきました。今回の『ザ・ジオメトリスト』は「平面から立体になる落差をどこまで大きくできるか?」という自問自答がはじまりです。構造体の基礎 (真ん中に折り線のある帯)を紙で作ることを思いつき、その基礎を使って基本の多面体を作ってみると驚きの美しさと強さだったので、それをキットにしてみました。面ではなく稜線で組み立てて「内部空間を感じる」多面体なので、透ける感じのバランスを何度も試作して紙のエレメントの幅や大きさを決めていき、さらにキットになった時の作りやすさの検証を繰り返しています。作り始めてすぐに実感したのが、紙の柔軟性はこの工作に欠かせない特性だということです。他の素材では接着に時間がかかったり、折り曲げ線で割れたりしますが、紙の場合はコーナーを接着する精度、角度や部材の長さなどが少々狂っていても、最後のいち部材を「えいっ」と引っ張って貼り付けてしまえば多面体になる。また、いちばん基本となる5つの多面体でも、面どうしの角度(部材の折り角度)はそれぞれに違いますが、紙なら型紙に沿ってコーナーをのり付けしてしまえば、ややこしい折り角度を気にしなくても美しい多面体が組み上がります。メッセージを書き込んだり、色鉛筆やマーカーで着色したり、マスキングテープで飾ることが簡単にできるのも、紙だから。試しにぜひ世界に一つしかない 「立体ギフトカード」を手作りしてみてください。

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正多面体とは

すべての面が合同な正多角形で構成されていて、なおかつ、すべての頂点に集まる面の数が等しい凸多面体のこと。正多面体は五種類しか存在しない。別名は「プラトンの立体」。


多面体好きデザイナーの話
玉木 明さん(日本郵便株式会社 切手・葉書室 切手デザイナー)

たとえばE=mc2が美しい方程式と呼ばれているように、私たちは美術的な世界だけでなく、数学に対しても「美しい」という形容詞を使うことがあります。おそらくそれは、 世界の本質を突き詰めたものごとに対して、ひとは本能的に美を感じる性質をもっているからでしょう。『ザ・ジオメトリスト』も、均整と調和のとれた構造体を工作していく過程で、その美しさに数学的な原理が内在されていることを直感的に気づかせてくれます。そしてその体験は、植物に潜んでいる数式や、絵画や建築に隠れている黄金比のような、自然や芸術の内奥にある理(ことわり)を見出す観察眼を育むことに繋がるのではないでしょうか。『ザ・ジオメトリスト』を通して世界を見れば、プラトンやダ・ヴィンチ、北斎といった天才たちが見た世界を垣間見ることができるかもしれません。

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