空中で咲く紙の花 |
諸仏を供養する法要で、寺院の屋根から撒かれる散華。
ほとんどのものは蓮の花びらをかたどっていますが、
「まわり花」は空中を舞っているときにだけ
花の姿が現れます。
その美しい舞いざまは、伝統的な散華が
新たな領域に向かって羽ばたいているかのようです。
初出:PAPER'S No.60 2019 秋号


デザイナーの話
三澤遥さん、本山真帆さん
(株式会社日本デザインセンター 三澤デザイン研究室)


製造担当者の話
岡村元嗣さん(岡村印刷工業株式会社 代表取締役会長兼社長)
岡村印刷工業では美術印刷の工房を持っており、オリジナルの散華を奉納しようと、森田りえ子先生を始め、様々な日本画家の方々の絵をあしらった散華をつくってきました。それを10年近く続けていたのですが、大阪で開催されたTAKEO PAPER SHOW 2014「SUBTLE」を拝見した際、三澤さんの作品「紙の飛行体」が面白かったので、「新しい散華を考えてくれませんか」とお願いしたんです。散華に何か新しいものを吹き込んでみたい。可能かどうかわからないけど、三澤さんなら何か考えてくれるかもしれない、と思ったんですね。それから4年。もう忘れているかな、と思っていた頃、ご連絡をいただきました。いただいた原型は3つ。構造のある複雑な形でしたから、とにかくたくさん試作をつくって撒いてみたのち、興福寺に持ち込んでみました。最終的に決まったのが、この最も可憐な案です。形をつくるのには、お寺の方や学校の生徒さんたちのお力も借りています。実際に撒いてみると、遠くから見ると見えにくいとか、もっと遠くに飛ぶように推進力を増したいとか改良すべき点も見えてきました。また、種を入れて飛ばしてみたらどうだろうとか、都会のビルやタワーでも撒いてみたら面白いだろうとか、あれこれと考えるのも楽しい。三澤さんのおかげで散華の新しい可能性が生まれたので、もっといろいろな形が出てきてもいいと思っています。日本固有の美しいものを私たちの時代につくれるということは、本当に嬉しいことです。