紙をめぐる話|紙の研究室 No.19

活版印刷のきほん
─紙の紙らしさが
生きる印刷

500年以上の歴史を持つ活版印刷が、「ニューメディア」として注目され始めています。どうやらデジタル印刷にはない特有の質感に新鮮さを感じる若い世代が増えているようです。活版印刷ならではの特徴や紙との相性とは?2016年に創業60年を迎える老舗の活版印刷工房、嘉瑞工房の髙岡昌生さんにお話をうかがいました。

初出:PAPER’S No.50 2015 秋号

 

活版印刷の特徴を教えてください
たとえばオフセット印刷は一度転写されてから印刷しますが、活版印刷は直接印刷するのでインキの量が違います。そのため墨(黒色)がより黒々と刷り上がります。過度の印圧や過剰なインキ量ではなく、適正に調整された理想的な印刷物をキッス・インプレッションといいます。もちろん、用紙や印刷面によってはある程度印圧を強めたり、インキ量を多めに調整することは必要です。また、オフセット印刷は原稿(デジタルフォント)の線が、ほぼそのまま再現されますが、活版印刷は活字の文字線よりもごくわずかにインキがはみ出て太めに見えるため(マージナルゾーン)、目に優しく読んでいても疲れにくいともいわれています。

どんな紙との相性がいいですか?
基本的に活版印刷はどの紙にも印刷することができますが、良い効果が出せるかどうかは紙との相性によって分かれます。一般的にコットンが入っている紙や、インキが浸透しやすい非塗工紙などは相性がよいです。またオフセット印刷だとブランケットが紙粉で埋まって嫌われる和紙も活版印刷のほうが適しているかもしれません。

活版印刷のこれからについて教えてください
近代の印刷の主流は、イラスト、写真印刷のカラー化によりオフセット印刷に早々に移行されました。それでも最後まで活版印刷が活用されたのは文字表現でした。詩集、句集、名刺など、言葉に想いが込もっているからでしょうか。デジタルフォントもデジタル通信も悪くはありません。でも、紙の繊細なテクスチャと活版印刷の質感が溶け合うことによって、文字(言葉)は送り手の想いを「紙」という葦(パピルス)船に乗せて受け手に届けます。活版印刷が「目的」ではなく魅力ある「手段」として選ばれることを望んでいます。

 

風光

ロベール