紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.05

三菱製紙 八戸工場 貯炭場

それはまるで、朝霧がかかった夜明け前の山。
眼前に高くそびえていたのは、
30,000トンもの石炭である。
細かく砕かれた状態で仕入れられ、
いくつもの山をなす石炭は、
ボイラーへ運ばれるまで、この貯炭場で静かに待つ。
広大な工場を稼動させるエネルギー源のひとつとして、
ここ八戸工場では石炭も利用している。
一枚の紙をつくるための、巨大な装置を動かす仕組み。
そこには膨大な力が必要であるからこそ、
工場内に自らエネルギー源を確保しているのだ。
現在工場では石炭ボイラーの他に、廃棄物ボイラーや、
木材チップから取り出される
黒液を活用した回収ボイラーなど、
数多くのボイラーを状況に応じて使い分けている。
効率よく力を生み出すために、
時代に応じたエネルギー源をつねに模索しているのだ。
石炭の山はその一つの風景。
製造業にとって、いつの時代においても志すべき精神が、
この製紙工場にも脈々と流れていた。

初出:PAPER'S No.36 2010 秋号
※内容は初出時のまま掲載しています