紙をめぐる話|紙の生まれる風景 No.11

紙祖神 岡太神社

しそしん おかもとじんじゃ

その社殿は艶やかな苔に囲まれ、佇んでいる。
拝殿と本殿が連なる、美しくも独特な複合社殿には、
約千五百年前にこの地に紙づくりを伝えたとされる
紙祖神である女神、川上御前が祀られている。
福井・越前和紙の里で営まれている和紙づくりは、
この地で暮らす人びとがいまも川上御前に寄せる
親しみの念と崇敬に深く結びついている。

鎌倉時代以降、職人たちの「紙座」(組合)が
この地域の和紙づくりの保護、流通、発展を
大きく促してゆくが、一産業の発展にとどまらず、
その結束力は歴史的な苦難を地域の人びとが
力を合わせて乗り越える、共同体の力でもあった。
和紙づくりという縁は、人を結び、町を守り、
この地の日々の営みに、溶け込んでいる。

初出:PAPER’S No.44 2013 夏号
※内容は初出時のまま掲載しています